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「ママ~こうえんいきたぁい」
「えっ?」
「こうえんいけばママげんきになるでしょ?」
千夏がピョンピョンしながら、ソファーに身を預けたままのあたしに笑顔で近づいてくる
その時になって“あ、あたしは元気がなかったのか”なんて気づかされているあたしがいて
子どもに慰めて貰っているあたしはなんて情けない母親なのであろうと思ったが、
「そうだね!いこう」と腰を上げた瞬間眩暈がした。
時計に目をやると、それはもう少しで夕方を知らせるもので朝からなにも口にしていない自分を思い出させる。
「じゃあ、くつはいてるね~!」とさっさと玄関の前で腰を下ろしている千夏に焦りながらも「ちょっと待ってね!!」なんて急いで支度をしている。
鏡に映る自分は、何かが抜けてしまったような哀れな顔をしていて
顔色なんてとてもじゃないけど、元気な人には見えない。
昨日、あれから家に着いたあたしはどうやってこの部屋に入り、どうやって眠りにおちたのかすら記憶がないほどなのだから、
きっと、脳が飛翔くん以外のことを受けつけていないのが自分でもよく分かる。
こんな顔じゃさすがにマズイなと、深めにキャップを被るとソファーに無造作に置かれている携帯に手を伸ばそうとした瞬間その行為はそこで止まった。
光を放つことさえもしなくなったあたしの携帯
それを持っていこうかどうか考えているあたしが、こうして行動に移すことをためらっているのであろう。
この小さな機械のせいで、あたしは縛られられるのかもしれないと思った時あたしはそれを置いていこうと何も持っていない手を来ていたパーカーのに突っ込んだ。
「ママ~?かぎもったぁ?けいたいもったぁ~?」
その声が聞こえた瞬間に、あたしの手は自然に携帯に伸びそれをポケットに突っ込むと千夏のいる玄関へと飛んで行った。