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「いい飲みっぷりだね、なんかいいことでもあった?」
ニヤニヤしながら体を近づけてくる。
いつもなら上手く交わすのに、今日はなぜか、そんな自分が発揮されず、体を押してしまった。
「いいことなんて、なんもないよぉ~」
空いた2つのグラスに一刻も早くお酒を入れ、仕事するふりをして、やっと押しのけたその体。
いつになく、鳥肌が立つ。
「俺はね~今日はいいことあったんだ」
「そうなの?」
「うん」
「はい、どうぞ!」そう言いながら、目の前にグラスを差し出すと、手を握られた。
「今日は、伊織ちゃんから、ハートマークの付いたメールが送られてくたから」
「えっ?」
「たまに、来るんだ。なんていうか、それだけで嬉しくてさ……」
『誰にでも、ハートマークつけない方がいいよ!!男は勘違いするからねぇ』
忘れていたはずなのに
閉じ込めてきたはずなのに
消し去ってきたはずなのに
その言葉が駆け巡ってあたしを支配し、遠いところへと連れていく……
「ハートマークがあるだけで、違う」
嬉しそうなお客さんに「もう付けることはないよ」そう言い残すと「トイレ行ってきます」と笑顔で立ち上がると、そのままトイレへ向かった。