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それはもう手で拭わないと、止まらないほどで……
目をこすっていると、あたしの不審な動きに「どうしたんだよ?」と、問いただされたが「目になんか入ったぁ……」なんて、おどけてみせた。
そんな冗談はもちろん通用するわけでもなく、すぐに「嘘つくな!」なんて怒られたりして……
幸せすぎたんだ
飛翔くんのぬくもりを感じて溢れ出してしまった涙……
あの時の苦しみを思い出して流れてしまった涙……
それなのに、涙の理由をしつこく聞いてくる飛翔くんに「大丈夫っ」なんて平然を装って言ってみたりしたのに
「お前が、大丈夫って言う時が1番大丈夫じゃね~だろ」
その言葉が、一生懸命止めようとしていた涙を再び一瞬で溢れださせた。
「バカな俺でも、そのくらい見抜けるよ」
そう、あたしは大丈夫なんかじゃなかった。
飛翔くんのいなくなってしまった世界は真っ暗すぎて、それでも光のある世界に行くことを拒んだんだ
真っ暗な世界なら、きっと何も見ずに済むだろうから
光のある世界は、全てが見えてしまって嫌でも受け入れなきゃいけないことが沢山あるだろうから
「もう、こうして抱きしめて貰えることなんて、ないと思ってたから……」
「うん」
「苦しかったの、辛くて、寂しくて、怖くて……」
「流奈……」
「飛翔くんのいない世界に……脅えてた」
ふるえていた……
あたしの肩も唇も
そして、飛翔くん肩も……
そう、あたし達は同じ想いを抱えていたんだ
なのに、どうして
こんなにも辛く苦しいのだろうか……。