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“時間”というものが、あたし達を離そうとする。
今日は、初めから1時間遅れて出勤するつもりだったのに、
1時間長く一緒にいたって、いつもとあまり変わらない気がしてしまうのはなぜなんだろう。
そして、別れの時間が近づくに連れて幸せな時間が一気に不安という言葉に変わってしまうんだ。
それでも、あたしは飛翔くんの隣で笑い続けている。
だって、そうでもしなきゃ、あたしはこの指定席から離れられなくなる
そうでもしなきゃ、あたしは現実から逃げてしまうだろう。
「じゃあ、行ってくるね」
「ふ~ん、頑張って!とは言わないよ」
「知ってるっ!」
あたし達がこういう関係になってしまってからは、あたしの仕事に頑張ってと言ってくれたことなんて一度もない。
その代わりにいつもおもいっきり抱きしめてくれるんだ……
「大丈夫だよ……」
「信じてる」
どれだけ、飛翔くんに大丈夫と言う言葉をかければ信じて貰えるのだろう
どれだけ、愛の言葉を伝えれば不安にならないでいてくれるのだろう……
そういつか考えたこともあったけど、
その答えは永久に見つからないことをあたしは知ってしまったんだ。
きっと、飛翔くんに心から信じて貰えることも不可能に近くて、
不安にさせないことも不可能に近い。
あたし達がこういう関係を続けている以上は……
「やっぱり、この匂い俺好きっ」
「えっ??」
「安心するんだ……」
「ぷっ!!ばかっ!!」
だから、あたしは飛翔くんの傍でたくさん笑い続けることを決めたんだ……。