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「暇だな、今日は……給料日前だもんな」
そう呟く店長の横で、あたしはニコッと笑ってみせた。
「どうした?そんな嬉しそうな顔して……」
その笑いに意味を持っていることくらいは、簡単に店長に見抜かれる。
いや、わざとそうしたと言っても間違いじゃないのだけれど……
「分かったよ、伊織には完敗だ、1時半になったら上がってもいいよ」
「やったぁ~!!」
「やっぱりな」と笑いながら、頭を撫でてくれた店長に「ありがとう」と言えば、あたしの頭の中はもう、飛翔くんとまた逢えるかもしれないという期待でいっぱいだった。
どうしてなのか、不思議に思う。
幸せな時間はあっという間に過ぎていくのに、こうして待っている時間というものはあまりにも長すぎる。
同じように時が刻むのだとすれば、やっぱり心の持ちようなのだろうけど、
そうしても、飛翔くんと一緒にいる時に過ぎていく時間の早さは神様の仕業だとしか思えないのだ。
「もうぉ~そんなに時計ばっかり見てぇ、いいよ!今日は特別上がりだ!!」
その言葉に「やったぁ~!!」とはしゃぐと、店長の方が神のように思えてきて「お疲れ様でした!!」と元気よく店を飛び出した。
更衣室に入るなり、ポーチから携帯を取り出すと☆飛翔くん☆を呼び出す
通話ボタンを押してコールが鳴るだけで、心臓がいきなり早く動き出してしまうくらい、あたしは完全に飛翔くんに惚れているのだろうな、と今さらながらに実感してしまう。
「もしもし?」
「あのね、早く上がれたの♪」
「えっ?マジで?」
「うんっ!!」
「じゃあ、すぐに行くから!!」
あまりにも、急いでいるような感じで電話を切られて、ツーツーと流れている音を聞きながら首をかしげると、
鏡に映っている自分がまだ、ドレス姿なのを確認しては急いで脱ぎ捨てた。
「お疲れ様ですっ!!」
店に一瞬だけ顔を覗かせては、駐車場までの道を走っていると後ろから「早く帰れよっ!!」と店長の声が聞こえ、その言葉に振り返り手をふると、車のある場所まで走り続けた。
「たまには先に待ってなきゃ」
仕事が終わると、いつも飛翔くんがあの場所に先にいて「おかえり♪」って抱きしめてくれる
だから今日くらい……
車に乗り込むと、二人の大好きな曲を流しながら強くアクセルを強く踏むと、いつもの場所までと車を走らせた。