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「そう言えば、なんで電話焦ってたの?」


「親父がよ、俺が風呂入ってる時に部屋で携帯握ってるんだもん」


「なに、それぇ~!」


「それが、流奈の電話だったんだけど、俺が話してる途中小指立てながら『これか?』なんて言うから」


あの焦りように思い出しては笑ってしまう、そして飛翔くんとお父さんのやり取りを想像しただけでも……



だけど、すぐに現実に引き戻される。


飛翔くんの家に行ったあの日、お父さんにからかわれた飛翔くんはあたしを友達だと必死に言っていたこと……



今日もきっと、友達だと言いながら来ているのだろうか……



「電話切った後、飛び出してきてなにも言われなかった?」



「えっ?あ、うん……」



「きっとさ、変な風に思うよね?」


「なんで?」



「だってさ、外でてもすぐに……」
「いいんだよ!いいんだ!!」



だってさ、外でてもすぐに帰ってくるなんて訳ありじゃないのか……って


そう言ってしまいそうになった所を飛翔くんに大きな声で止められると、なんだか目頭が熱くなっていく……



夜中に出て行っては、朝を迎えることもなくすぐに家に戻る飛翔くん。


きっと、お父さんだって何かを感じているはずだ……




そう、これが、現実


見なくてはいけない、逃げられることのない現実……。



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