~color~




「おはようございます!!」


「おう!おはよ…ってどうして濡れてんの?傘はよ…」


あたしを見るなり、驚いた顔をした店長に「濡れたい気分だった」と笑いながら交わすと更衣室へと向かいおもいきりロッカーを開けた。



あっ……


一番手前にかけられている白いドレス……



それを手に取ると迷わず着て、鏡に映る自分に笑ってみせた。



大丈夫、あたしはまだ笑える。




飛翔くんがどこか遠くに行ってしまいそうな不安を心の奥の方にしまいながらも、淡々を化粧を直しながら、雨で崩れた髪の毛をセットすると、急いで待機室へと走る。



もう少しできっと、あたしの見ていた長い夢物語は幕を閉じるのだろう。


悲しいことに目が覚めたとしても、飛翔くんの記憶ははっきりと残ってしまうことも、もう分かっている。



だからこそ、今までの自分をこれから取り戻さなければいけない



飛翔くんが剥がしてしまった仮面を、あたしはまた付け直さなきゃいけないんだ……



携帯をバッグから取り出すと、電源を切った。





夢からいきなり覚めても自分が取り乱さないように、あたしは自ら少しづつ目を開けて行こう……



そう自分に言い聞かせながら、ポーチの中へと雑にしまいこんだ。




< 351 / 378 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop