~color~



「ありがとうございました!!!」


そう大きな声が飛び交う中で、


気づいた時にはラストソングが店内を響き渡っていた。


「いやぁ~今日は飲んだなぁ~!!楽しかったよ!!」


あたしの頭ポンポンと叩くお客さんに「ありがと」と笑顔で返しながら店の外へ出ようと、お酒のせいで足元がふらついているお客さんの後に続いていく……



「じゃあね、また来るから」


嬉しそうにドアを開け外へと一緒に出た瞬間、びっくりするほどの雨にお客さんと思わず目を合わしてしまう。


「こりゃ、すげ~な……」


「あっ、傘は?」


「いらねぇ~よ、すぐタクシーだし!」


またね、と言いながら小走りに走って行くお客さんを見ながら、ムリがあるだろ?なんて思いながら空を見上げた。




「すっごい雨……」



勢いよく降り注いでくる雨をなぜだか綺麗だと思った。


心の中までその雨を降らし、いっそのこと全てを流してくれたら、あたしはもう苦しまないだろう……



雨と言って連想させるのは、やっぱり幸せなことではなくて、苦しみや悲しみ



この雨の雫のように沢山あたしも涙を流したなら、枯れ果ててもう流す涙も残らなくなるのだろうか……



「風邪ひくぞ……」



「えっ?」


振り返るとそこには優しい顔をした店長がいて、あたしにそっとスーツのジャケットをかけてくれた。


「こんな雨の中、あんなにも売上サンキュー!!」



その言葉を残し、店へと入ろうとした瞬間「雨は俺も嫌いじゃねぇ~な」と意味ありげな言葉を残して行った。






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