~color~



シャワーを頭からかぶれば、こみ上げてくるものと一緒に、あたしの目から再び涙が流れ始めた。


これは一体なんなんだろうか……


ずっと閉じ込めていたもの。


どんな嬉しいことがあっても、感動することがあっても、悲しいことがあっても、あたしはあの時以来、涙を流すことがなくなった。



違う……泣けなかったんだ。



それなのに……



シャワーにあたりながら流す涙は自分までも錯覚するようで……


これは涙なんかじゃないと言い聞かすように、シャワーの強さを最大にした。


それでも、あたしの涙は止まることはなくて、頭からはつばさくんが離れてくれない。


つばさくんのことを考えれば考えるほど苦しくて、何より胸が痛む……。





忘れていたもの


人を好きになること



それは二度とないって思ってた。



それなのに、この気持ちは自分でも認めざる得ないほどで、だけどそれにあたしは脅えている。




二度と誰も好きにならないと誓ったはずなのに


あたしのこの気持ちは、どんな奴でも変えることは出来ないと思っていたのに。




それは簡単に開けられてしまった。







好きになってしまったの。



翼……?



あなたと同じ名前ともつ人のことを……



そして、あなたと初めて出逢った人同じ日に……




偶然かもしれない


それでもね。一瞬だけ翼が戻ってきてくれたのかと思ってしまったんだ。




翼の仕業なんじゃないかって……




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