~color~




飛翔くんと別れてからも、あたし達は皮肉なことに、同じ地元だけあって、運転中に何度もすれ違ったりもした。


姿をみかけたことも、偶然にも後ろを飛翔くんの車が走っていたこともあった。



同じ居酒屋にいたこともあって、あたしがトイレから出た瞬間、同時に男子トイレから出てきた中西くんを見て


「久しぶりっ!!」だなんて偶然すぎる出来事に二人お腹を抱えて笑った。


「流奈ちゃん、アイツいるよ……」



その時、一瞬で酔いがさめて、固まってしまったのを覚えている。


胸が苦しくなって、今すぐにでも飛翔くんの胸の中に飛び込んでしまいたいと思った。



「今なら、アイツも大人になったと思う、だからもう一度……」



その言葉に我に返り、あたしは笑顔で首を振り続けた。



「アイツは今でも……」


そのあとの言葉を聞く前に「幸せになってほしいんだ」そう言い放ったあたしに、中西くんは悲しい顔をした。



「あたしはずっと、好きでいるよ」



そんな言葉を吐き出した自分が1番ビックリしていた。



だけど、こんな風に笑顔で自分の気持ちに自信を持って中西くんにぶつけられたのも、飛翔くんのおかげだと思う。




「流奈ちゃん……」


「元気でね」



振り返らなかったし、飛翔くんがどこの席で飲んでいるのかさえ捜しもしなかった。






飛翔くんがあたしの幸せを願ってあたしから離れたとしたなら、


あたしも飛翔くんの幸せを願いたいと思う。



強がりかもしれない、


だけど、飛翔くんの未来にはもう、あたしはいないのだから。




だけどあたしは………


ずっと忘れない



あなたと



愛し合った日々をーーー。







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