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「つばさくんっ」
歩いている人なんて、まるで視界に入っていなかった彼は、その言葉に体をビクンとさせた。
「うわっ、マジびっくりしたんだけど、どっから来た?」
説明すると「そっか」なんて、照れくさそうにはにかみながら、タバコを地面に擦り付けて揉み消している。
「しかし、なんかちげ~なぁ…店の姿とは」
下から上までジロジロ見てくるつばさくんに、なんだか照れくさくなる自分がいる。
「そう?」
「うん、でもそっちも好きっ!!だけど、どう見ても不釣り合いだな、俺なんかじゃ」
鼻で笑ったつばさくんに、そんなことないよ!!と心の中で思っているのに、その言葉が出てこなかった自分がいる。
それほど、悲しげな、酷く寂しそうな顔をしている彼がそこにいたから。
簡単にその言葉を発することなんてできなかった。
寂しそうな表情を見せたかと思えば、すぐあたしに笑いかける。
毎日、毎日、時間の許す限りメールしているはずなのに、止まらない会話……
座り込んでいるつばさくんの横にしゃがみ、笑いながら話している二人を、通りすがる人たちが、見てくる。
咄嗟に、あたし達は周りからどんな風に見えているのだろう……
恋人同士に見えてるのかな
ただの知り合い?
友達?
そんなどうでもいいことさえ気にしている自分もいて。
「あ~、しっかし時間ってよ、うぜ~よな」
時々、時間を気にして時計を見ているあたし。
そのあたしの姿を見兼ねて、つばさくんが発狂する。
知っていたよ、あたしが時計を気にするたびに、酷く悲しい顔をしていたこと……
「本当だよね」
そう笑いながら言うことが精いっぱいで、全然平気なふりをするのがやっとで、本当はあたしだって悲しい顔をしてしまいたかった。