~color~
携帯を開けばそこには“受信メールあり”という文字が画面の上に出てきている。
開かなくても、つばさくんであろうと思う自分がいて
それを開けば《もっと一緒にいたかったな……》という文字がまっ白い画面に打ち込まれていて、思わずそれに触れてしまった自分がいた。
苦しい……
ただの小さな機械の画面に書かれている文字を見ているだけなのに、どうしてこんなに苦しいのだろう。
あたしの心は一体どうしちゃったんだろうか……。
手が震えている
その手を口元に持っていけば、その口さえも震えていた。
「つばさくん……」
大きな罪をおかしてしまったと思っている自分がいる
こんな自分が怖くなる
こんな感情が湧いてくる自分が恐ろしくなる
《流奈も、もっと一緒にいたかった……》
そう、真っ白い画面に一文字ずつ言葉を並べていけば、送信のボタン1つで、あたしの気持ちがつばさくんの元へと送られた。
携帯というものが、こんなに便利なものだとは
今の時代、自分の伝えたい言葉をこの真っ白い画面に打ち込めば、相手に送ってくれるのかと、この時初めて携帯というものの便利さに気づいた。
すぐに返信を知らせるランプが光ると
《店に行かせたくなかった》なんて、言葉が綴られていて、思わず目をつぶると大きく深呼吸しては《流奈も行きたくなかった……》なんて素直に気持ちを綴った。
《あ~!!離さなきゃよかった(笑)なんてな!仕事がんばれよ!!》
《うん…ありがとう♪頑張るね!!》
“送信しました”
その画面のOKボタンをおせば、待ち受けに出ている時間が、あたしを現実に引き戻す。
「いかなきゃ」
ロッカーに入っているドレスを選ぶこともなく、手前にあったものを手にすれば、そそくさと着替え、鏡に映る自分から目を逸らし、店のドアを開けた。