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「ん?」
「ううん、なんでもない!」
少しだけ沈黙がはしり、そんなあたし達の間に耳に入り込むのは、つばさくんの車から流れている大音量の音楽。
「それより、うるさくない?音楽……」
「だよな、迷惑だなこんな時間に」
そう言いながら車に戻りエンジンを止めたつばさくんの行動にもう少しだけ一緒にいれるって思ってしまった自分がいた。
「俺、好きでさ~こいつらの曲聞くとテンションあがっちゃう!!」
「わかる~いいよぇ、夏って感じがするっ♪でも流奈は最近、ハマっているのはね~」
「分かった……だろ?」
「えっ?なんで分かった?」
「えっ?マジ?俺が好きだから!!」
「そうなんだっ!いいよね~仕事行くとき必ず聞いていく~」
「ぶっちゃけ、俺マジでファンだよ、DVDとか見てるもん」
そんなお互いの好きなもの、苦手なこと、そんな他愛もない話で盛り上がっていた。
それでもあたしは気づいていた。
時折見せるつばさくんのどこか冷めた目をする瞬間を……
それなのに、あたしを見つめる瞳は透き通っていて、そんな目で見られるたびに視線を逸らしてしまう自分がいる。
見透かされてしまう……
そんな気がするんだ。
「なぁ、流奈ってさ、漢字でどう書くの?」
「るな?流れるっていう字に奈良の奈。」
「ふ~ん、そうなんだ、店の名前の伊織様とは違う可愛い感じだな!!」
「そう?」
その瞬間“つばさってどう書くの?”そう言いたかったのに、あたしの中でつばさという文字が1つしか出てこない。
翼……
翼……
「……おい、って……聞いてる?」
「えっ?あ、うん。聞いてるよ!」
「たまに何処か違うとこに行ってるよな、流奈って……」
「そう?違うよ、つばさってどう書くのかな?と思って考えてたの!!」
咄嗟に出てしまった嘘に酷く後悔しながら落ちつかせるために、さっき買ったタバコを取り出した。