~color~


お風呂から出ると、ソファーに置いてあるバッグの中から携帯を取り出す。


ささっと体を拭いて、服を着替える前にメールを確認しようとしている自分に少しだけ呆れてしまう。



せめて家に帰ってきた時くらい、全て忘れてしまいたい


そう思うくらいにあたしの頭の中は1日中、飛翔くんで支配されている。



それを開いた瞬間、あたしはソファーに力が抜けて座り込み酷く肩を落とす……



《お前って本当に謎だよな?》


そんなメールにあたしは平然を装って返す自分がいる。



《なんでよ??》


《いやぁ、わっかんねぇ~マヂで…。》



真実を暴露するカウントダウンが始まっているのは、よく分かっている。



それでも、あと少し、あと少しだけ、この幸せな時間を持続したいと思う自分がいる。


たとえ、1分でも、1秒でも……



飛翔くんとの朝まで続くメールの日々も……


姿を見て、車を見て、ドキドキする日々も……



あと少し、あと少しだけでいいからと……




この日、あたしがその後にメールを返すことはなかった。


《寝たのかな?おやすみ……》



そのメールが飛翔くんから入って来たとき


あたしは飛翔くんのメールのフォルダーを消去し



“お客さん”のグループから、新規フォルダーで“飛翔くん☆”というものに作り直し、指定着信音さえも、2人が好きなアーティストのものにした。





そして、バルコニーに出て、あたしは空を見上げた。


そこには沢山の星達が輝きを放っていて、それを見ながら涙が零れ落ちた……






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