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「なんかさぁ、最近、伊織また綺麗になったんじゃないの?」
「えっ?そんなことないよ~、でもありがとう」
そう言われながら今日もまた、お酒を作っているあたし。
「しかし伊織も、もう4年くらいこの店に居るのか……」
「うん、そーゆーことになるね」
「大分古株だな……」
ウイスキーをついだグラスに入っている氷を指でクルクルと回すと、あたしのグラスに「お疲れ」と乾杯をして、体に一気に流し込む荒井さん。
その行動は毎回同じで……なのになぜだか見ていても飽きない。
荒井さんは、あたしが新人でこの店に入った時に1番最初についたお客さんだ。
お父さんよりも少し上で、そしてワイルドな独身の職人さん。
荒井さんと話しているとなぜだかホッとする……
いやらしさとかなくて、そしてあたしに子供がいるのも知っている。
だから、たとえ5分でも、お金のバックがあるんだろうと同伴してくれる。
まさか旦那もいますなんてことは口がさけても言えないけど。
でも、本当にお父さんみたいな存在で癒されてしまう。
「古株だよねぇ、1番古くなっちゃったし」
「なぁ、伊織は好きな男とかいないのか?」
「えっ!?」
仕事なのに……
嘘なんて、いつもいくらでも出てくるのに。
どうして、あたしはこんなにも悪女なのだろうと思う嘘なんていくらでも……
だけど、最近のあたしはやっぱり、飛翔くんのせいで、そんな嘘さえもつけないでいる。
「その顏は好きな男でもできた顏だな」
荒井さんがあたしの顏を覗き込むとあたしはそれから視線を逸らし、自分のグラスを口元へと持って行った。