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「でも、まぁ実際問題よ、難しいよなオチビとかいるし。好きな男が出来てもそーゆーのひっかかってくるよな」
「ましては若い男なら尚更信用ないし、伊織にまさか子供が居るとは予想もしないだろうしな」
その時、飛翔くんの笑顔が横切る……
心がキューッと痛んでいく……
「だからさ、俺くらいの男はどうよ?」
ハハハッと言いながら、あたしの肩を叩く荒井さんに、何も返せない自分。
笑えない。
上手く冗談さえも出て来やしない。
「でも、好きな気持ちがあればさ…どんな形でも、どんな恋愛でも関係なくなぁい?」
まるで自分に言い聞かせるかのように
でと自分には関係のないことのように装いながら、明るく……
空いている荒井さんのグラスに新しくウイスキーを注いでいく……
『壁があるよな…』
そう飛翔くんがあたしに抱いた不安。
「そんなの綺麗ごとだろ、現実はそんな甘くはない」
そうポツリと言い放った荒井さんを今日ばかりは、好きにはなれなかった。
グラスを荒井さんの前に置くと「そうかもしれないね」と呟き、あたしもグラスの中のウイスキーを体の中に流し込んだ。
綺麗ごと……
愛があれば大丈夫とか
二人の気持ちが確かならとか
どんな状況でも乗り越えられるとか
好きな気持ちだけで……とか
確かに綺麗ごとなのかもしれない
そんなことあたしだって
よく分かっていたことじゃない。
「いい飲みっぷり!!」
そう隣で笑っている荒井さんに、あたしもとびっきりの笑顔を返した。