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「ああ、面倒くせ~奴に着いちゃった、冗談じゃねぇ~だろ?」
少し沈黙が流れた瞬間、彼の口からそう言葉たちが発せられた。
腹立つお客さん、やりづらいお客さんなんてこの世界にいれば腐るほどいる。
だけど、目の前にいるこの男は存在じたいがあたしを不愉快にさせる。
「図星?お姉ちゃん新人?上手く交わせないの?」
この男の毒舌さに圧倒されているんじゃない。
こいつの変化のない声のトーンに惑わされている。
まるで、ただ文を読んでいるかのように棒読みで、そしてあたしを見つめる目が据わっている。
変な薬をやってるとか、そういうんじゃない。
まるで、何かを無くしたかのような
なんとも言えない悲しい目……
「名前は?」
気が付いたら、あたしの口から社交辞令のような言葉がでていた。
「知りたいの?俺に興味でも持った?」
あははっ……と声に出したかと思えば、ふん。なんて鼻で笑いう態度に
もうさすがのあたしでさえ発狂してしまいたくなる。
やりづらい……
惑わされる……
「別に言いたくなきゃいいよ」
ぶっきらぼうに答えたあたしと重なるように「つばさ」そう小さく呟いた。