~color~
「うそうそ、そんな顔しないで、冗談だから」
冗談じゃないことくらいすぐにわかった。
本当は性格上、責めたくてしょうがないことくらい分かってる。
「うん、分かってる……ごめん、でも本当に騙すつもりはなかったんだ」
騙すつもりなんてなかった
だけど、すぐに真実を話すつもりもなかった。
醜いあたしの部分。
怖かったんだ
真実を言って飛翔くんが消えてしまうことが
真実を言って飛翔くんに嫌われてしまうことも。
涙が零れそうになるのをグッと堪えた。
涙見せて、ごめんね。なんて可愛く言える女なんかじゃない。
そんな涙を流せる綺麗な女でもない。
あたしの涙はきっと醜い。
静かな車の中から、耳を澄ますとあたしの好きな女のアーティストの音楽が流れている。
そして、、1番切ない曲……
それが終わる頃、タバコに火をつけるライターの音が聞こえてきて、あたしは少しシートを倒し、そこに身を預けている飛翔くんを見つめた。
「だから言ったろ?壁があるって……」
「でも、あの時はまだ知らないよね……?」
「俺がなんも知らないとでも?甘くみんなよ!」
凄く、凄く冷静な口調で言い放った後、窓を開け、タバコを投げ捨てた飛翔くん。
その腕に凄い力が入ってたのをあたしは見ていた。