僕の遊びと俺の迷惑
魔王と勇者
「だからね、僕はこのメーカーはチョコ専門で行くべきだと思う。」
俺の目の前にいるそいつは、菓子を齧り甘味を飲みながら言う。
「薄塩とかコンソメとか、そういうのに手を出しちゃうから株価も下がるし味も落ちる。」
株価は違うと思うが口には出さないでおこう。
「うん、それにしてもこのチョコスナックは美味しいね。あ、君も食べる?」
謹んでご遠慮しよう。それにそんなことはどうでもいい。
「何故そこに座っている?」
そいつは膝を立て、ふんぞり返った様子で椅子に座っていた。その椅子は物々しい装飾がされているうえ、少々大きい。小柄なそいつにはまったく不似合いである。
「何故って、君がお出かけしていたから待っていてあげた。これ以外に理由が必要かな?」
満面の笑みを浮かべたそいつの様子に、俺は呆れを隠せない。
こいつはいわゆる勇者だ。魔族、ひいては魔王を倒すためどこかの国の王様が用意した人間。人間とは思えない自身の強さを使い、すでにこいつは四天王と呼ばれていた幹部を全滅させ、残るは魔王のみというところまで来ていた。単刀直入に言うとその魔王は俺なのだが。
ここは俺の城で、当然今こいつが座っている椅子は俺の物である。用事で出かけているうちに来たらしい。帰って来た時にはすでにいた。
「さてと。今日も戦いに来てあげたよ、魔王様。」
勇者は挑発的な眼差しを俺に向けて、椅子からひょいっと飛び降りた。
「誰も頼んでない。帰れ。」
だいたい3日に1度、こいつは俺の城にやってくる。一応俺の討伐に来ているのだが、俺とこいつの決着がつくときは未だに来ない。
「酷い!僕との事は遊びだったのね!?」
「帰れ。」