僕の遊びと俺の迷惑
「嘘でしょ。」
龍はうなり声を上げながら、真っ直ぐ勇者に向かっていった。勇者は水の魔法を発動させるが、その程度では消えない。
勇者は向かってきた龍を横に避けた。しかしそのまま龍は勇者をとぐろ状になって囲んだ。
「対応に困るトカゲちゃんだな。」
「こんな長いトカゲがいるか。龍だ。」
そんな状況でも冗談が言える勇者に呆れつつ、俺は拳を握った。それを合図に龍は炎の球体に変化し、そのまま収縮、爆破した。
爆風が俺の髪をなびかせる。爆風によって起こった砂埃と煙で、勇者の確認は出来ない。だがこれで終わりではないだろう。終わりだったらどんなに楽だっただろうか。
上空の煙が一閃切れた。勇者はそのまま俺の背後に落下。もちろんただでは着地しない。落ちる過程、ちょうど俺の首元で自身の剣を横に払った。俺は咄嗟にしゃがみその場から2、3歩離れた。
今の攻撃は少し本気だったようだ。瞬間見えた勇者の顔からいつも消えない笑みが消えていた。
「むむ、さっきのトカゲちゃんは凄かったね。結構効いた。」
「龍だ。」
着地の一瞬で勇者の顔に笑みが戻る。服がかなり焼けてしまっている。髪ゴムも焼け落ち、結んだ意味がなくなっている。本人も無傷ではない。
「よし、魔王様の新作見せてもらったし、僕のも見せてあげるよ。」
そう言うと勇者は剣を天に掲げた。二言三言何か呟くと、剣の柄から何やら光の球が出てきた。ボールほどの大きさのものが数個。それは俺を囲んだ。
「この剣さ、いわゆる聖剣らしくて。ちゃんと伝承聞いたらこんな技持っていたみたい。この前初めて知ったんだ。」
「聖剣らしいって。」
「何か貰い物だからさ。ほら、買ったら商品案内とかあるけど、貰った物にはないでしょう?タグとか。」
楽しそうに笑う勇者とひきかえに、俺は何か嫌な予感がしていた。
「冗談はこのくらいにして、お返しだよ。」
瞬間、1つの光の球から一閃の光が放たれた。俺は咄嗟に避けたが、光が当たった床が焼き焦げたようになったのを見て、一筋汗が首元を伝った。一種のビームに似たものか。
「魔王様、はたして避けきれるかな!」
それを合図にしたかのように、光の球は一斉に光線を出し始めた。全て俺に向けて。