僕の遊びと俺の迷惑
そういうと勇者は俺の裾を掴み、持ち前の馬鹿力で引っ張った。
「おい!!」
予想していなかった行動に反応できず、俺は勇者の隣に寝転がる形になった。
「魔王様うるさいから、ここで寝ていて。」
「ふざけるな!」
「おやすみ。」
「おい!」
俺の言葉も聞かず、勇者は静かに寝息を立て始めた。俺は裾を掴まれたままで脱出も出来ない。
「くそ・・・。」
俺は諦めて寝転がったまま上を見上げた。爆風やら何やらのせいで、ところどころ壊れている天井。後で会計に怒られるなとぼんやり考えた。
視界を横に向ける。隣では30センチ程の距離を開けて、勇者が寝ている。
本当のことを言うと全ての魔力を使い切っているわけではない。無防備に眠っているこの子供の息の根を止めるくらいは残っている。簡単だ。この小さな頭に刃を突き立ててやればいい。きっと一瞬で済む・・・が。
「あほらしい・・・。」
敵とはいえ、眠っている相手、しかも子供を殺す?この俺が?そんな軟弱者ではない。どうせ殺すなら正々堂々と。こんな不意打ちをするほど落ちぶれてはいない。
俺は勇者を見渡す。全体的に小さな体。あどけない顔、長い髪。細い手足、そして少しの膨らみを持った胸。一般的に言う、人間の“女の子”。こんな生き物のどこに俺と対等にやれる力があるのだろうか。
「まあ、いいか・・・。」
考えるのが面倒臭い。こいつは性格含めて人間とはちょっと違う生き物。それでいいか。
少しだけ、と目を閉じた。自分から言い出したことだが、本気で戦うと疲れる。
目を瞑ってすぐ俺の意識は浮上していった。