僕の遊びと俺の迷惑
最初
初めてこいつがこの城にやってきたときの事を、俺は今でも覚えている。
「君が魔王?」
不適な笑みを浮かべながらそいつは城に現れた。こいつが来る事は分かっていた。四天王全滅とくれば当然勇者は俺のもとに来る。
「もっと怪物みたいな奴かと思っていたのに、案外普通だね。」
それには俺も同意見だった。ごつい筋肉質の戦士が来ると思っていたのに、来たのは華奢な子供。似合わない大きな剣を腰に下げ、鎧どころか布で出来ている軽装を身にまとった人間。
「ねえ、君強い?僕ね、強いやつと戦いたいの。四天王、だっけ?あの人達は弱かったからつまらなかったよ。君もあんまり強そうじゃないね。」
怖いものはないと言いたげに凛と立っているそいつに俺は苛立ちを覚えた。好き勝手言ってくれたものだ。
「お前こそ勇者には到底見えないな。迷子か?子供は家に帰ったらどうだ?」
俺がそういうと勇者は一瞬ぽかんとした表情を浮かべ、そして笑い出した。
「あはは!こんなとこまで来る迷子はいないよ!もし迷子なら相当根性のある子供だと思わない?」
勇者はそう言いながら無邪気に笑った。
「お前はこんなところまで冗談を言いに来たのか?」
その度胸と自信に、俺はもはや呆れを覚えた。
「まさか。君と戦うためにはるばる来たんだよ。魔王だから強いでしょう?」
にこりと微笑むと、勇者は剣を抜いた。
「君ぐらいは僕を楽しませてよ。」
屈託無く笑う勇者に向けてため息をついた。
その後の事は詳しくは言わない。ただ、俺としたことが羽目を外しすぎたとだけ言っておく。そいつと俺のせいで城が半壊してしまったのだから。