僕の遊びと俺の迷惑
本気のバトル
この城にいる魔物は大概いつも同じ奴らだ。もちろん門番も。
「あ、魔王様おかえり。」
城の門で俺は呆れていた。
「ま、魔王様おかえりなさいませ…。」
勇者にお菓子を貰っている門番を見たらそうなるのも仕方ないと思うしかないのか。
「…賄賂か」
「い、いえ!滅相もありません!!これは…。」
「僕の善意!いつもお疲れ様ってね。」
もはや何を言う気にもならなかった。
ため息をついて勇者と門番を無視する。城に入っていく俺を慌てて勇者が追いかけてきた。
「門番さん最近は僕を普通に入れてくれるから助かっているよ。毎回毎回吹き飛ばしちゃ可哀想だからね。」
そうか、それでこの前も普通にいたのか。
「お前が来なきゃ済む話だが。」
「またまた、僕が来なきゃ寂しいくせに!」
そのポジティブな思考はどこから来るのか。
「あ、もしかしてやきもち?心配しなくても僕は魔王様しか見てないよ!…って、そこまで怪訝な顔でこっち見なくても…。」
俺はそのおぞましい発言に、無意識にそんな顔をしていたらしい。しかも驚きのあまり立ち止まってしまった。
俺が再び歩き出すと、勇者が俺に合わせるように小さな歩幅を早めて付いてくる。
「ねえ、魔王様。僕のオススメのお菓子食べてみてよ。」
「俺たちに食べ物は必要ない。」
何度言っても理解しない。外部から何かを摂取しなければいけない下等な生き物ではないのだ。
「ワイン飲んだりするのに?」
「味を嗜むためであって必要性はない。」
「じゃあお菓子も一緒じゃない?」
そう言うと勇者は俺の前に回りこみ、言い返そうとしていた俺の口にお菓子を突っ込んだ。俺は咄嗟に口を押さえた。甘ったるいチョコの味が口の中に広がる。
「油断大敵、って前に言ってあげたのに!」
楽しそうに笑うと、勇者は大広間に走って行く。
悔しいがその通りだ。人間なんかにお菓子を食べさせられたことも悔しいが、案外甘味も美味いと思ってしまっていることが悔しい。