僕の遊びと俺の迷惑
「つれないな。もうちょっと興に乗ってみなよ、魔王様。」
興に乗ってどうする。そんな必要ないだろ。
「お前は乗り過ぎだ。俺ぐらいが普通だろ。」
「魔王様、自分を普通だと思っているの…?」
「どうして本気で驚く?」
本当に腹が立ってきた。
指を鳴らし、それを起動の合図と勇者の足元を爆破した。しかし分かっていたのだろう、爆破の前に後ろに飛んでいた。
「おっと。今日の魔王様は積極的だね。僕は嬉しいよ。」
着地と軽口を同時に行った勇者は急いで自分の長い髪を結った。
俺はそれに構わず続けざまに指を鳴らす。しかしこの爆発も勇者は後ろに飛んで避けていた。相変わらずの身軽さだ。
「やられっぱなしはよくないね。」
勇者はそう言うと剣を素早く抜き、俺に切りかかってくる。俺も剣を出現させ、それを受け止める。剣がぎりぎりと音を立てる。
「いいじゃないかやられていろ。お前好きだろ、怪我するの。」
「いや僕マゾじゃないし。どちらかと言うとサド?まあ、相手によっては考えてあげてもいいけど。」
「知らん上にこの上なくどうでもいい。」
俺は勇者を弾き飛ばすと追撃した。再び剣がぶつかる。
「魔王様相手にマゾになったらそのまま昇天しそうだから嫌だな。」
勇者は自身の身軽さを生かして、俺の剣を支柱に俺の上の宙をくるりと回った。俺の背後に着地し振り向きざまに剣を振るう。咄嗟に避けはしたが頬をかすった。
「お望みならいつでも昇天させてやる。そこに正座すれば一瞬だぞ。」
頬に垂れてきた血を拭い、言い放った。
「いや、勘弁してください。」
そう言いながら苦笑する勇者を見据えつつ、俺は魔法を発動させた。初めて使うものだ。
「おお、聞いた事ない魔法。いいね、誰にも見せた事ないもの、僕に仕掛けてみてよ。」
余裕たっぷりに笑う勇者に、俺はお望み通りにと仕掛けてやった。
床に浮かび上がらせた炎の円から、炎で出来た龍が出て来る。人間を簡単に飲み込める大きさの龍。さすがに勇者の笑顔が引きつった。