はちみつのにおい
しばらくすると、お腹が空いたのでしんちゃんに

「お腹がすいたよ。」

と言った。

「そうだな。」

そうしてじゃんけんをした。

今日はしんちゃんが負けたので、私はちょっと肩を落とした。
じゃんけんをする決まりを作ったのはしんちゃんだ。
彼の優しさで私だけに料理を作らせるのは悪いと思う心使いからなのだが、私の料理の方が断然おいしいのだ。

しんちゃんは台所からパスタをゆでて持ってきた。そして、冷蔵庫の中にある納豆をかけて二人で食べた。しんちゃんの作れるものはそれくらいしかなかったけれど、

「納豆は身体にいいんだよ。」

と笑いながらいうので、私はその笑顔を見ながら食べた。

私が風邪を引いたときはしんちゃんは慌てて、いつも何か作ろうとするのだけれど、それは決まってパスタで私はいつも笑ってしまう。
傘の花を見るのに飽きた私は、夕飯はどうしようとかと考えたけれど、しんちゃんのパスタがあまりにもお粗末だったので、なんでもいいかなと思った。

「しんちゃん、夕飯何にする?」

「いま食べたやん。」

「でも夕飯、何食べたい。」

「そんなこと考えられない。」

「うーむ。」

真剣に考え込んだ私をみてしんちゃんが後ろでくすくす笑った。

しんちゃんのごつごつした手が私の頭を撫でた。


「じゃあ、あのコートヤードの店に行くか?」

「うん!」

私は嬉しくなって赤い傘を用意した。

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