太陽王と月の少女
セレーネは軽く吹き出してしまった
ヘリオスは訝しげに碧い瞳を見開く
「なんだ?」
セレーネはバルコニーの手摺りにもたれた
月を背にして微笑む
「ヒュペリオンの王は金銀財宝をばらまく浪費家と聞いていたが、失礼した。それはやはり先王の事らしい」
素直に詫びるセレーネは夜闇に溶け込みそうな程、澄んで見える
漆黒の髪に漆黒の修道服
白い肌と月明かりの銀の瞳だけが闇に浮かんでいるようだ
「ふん、あたり前だ。先王は金に目が無かった……」
そこで2人は沈黙する
その先王のせいでセレーネはここに居て、ヘリオスは王の証を手放したのだから
「とはいえ、アルテミスの神官のくせに人波に慣れていないなんて情けないぞ」
嫌味を忘れずに言うヘリオスに怒りよりも笑いがこみあげた
「貴方もその口ではないのですか?」
「そんなわけあるか。オコナー男爵がお開きの挨拶をする。主賓のお前がいなくては終われないからだ」
行くぞ、と言ってヘリオスは広間に戻った
セレーネは苦笑して続いた