太陽王と月の少女
馬蹄の音を聴きながらヘリオスは向かいに座るセレーネを見た
バルコニーでも思ったが、この少年は本当に少女のようだ
顔立ちは少女と言っても通じそうなほど繊細な作りをしている
それに……
「何故髪をのばしているんだ?」
カラスの濡れ羽色をした髪は今は高く結あげてあるが、そのせいで余計に女のように見えてしまうのではないだろうか
セレーネは苦笑しながら答えた
「あぁ、アルテミスの神官には色々としきたりがあるんです。コレもその一つですよ」
「髪をのばすのがか?」
「ええ。貴方には下らないことでしょうが」
ヘリオスは嫌味を返されてそっぽを向く
「ああ、そうだな!女のように髪をのばすなんて」
その時、セレーネが瞳にほんの僅かに警戒の色を映した
疑問に思って言葉を発しようとした時、突然馬車が傾いた
一瞬の浮遊感
ヘリオスは衝撃を覚悟して咄嗟にセレーネを抱き締めた
「伏せろ!」
馬車は横倒しになった