太陽王と月の少女
ヘリオスは目の前に星が散るのが見えた
「くそっ……」
短く悪態をついてヘリオスは身体を起こそうとする
受け身をとり、頭は避けたが全ての衝撃を取ることは出来なかった
「……大丈夫か神官殿」
声をかければ腕の中でセレーネが呻く声が聞こえる
「なんとか……」
「それは良かった。では逃げる準備だ」
「は?」
訝しげにセレーネは顔を上げた
それにかまうことなくヘリオスは身体を起こして天井になってしまったドアをこじ開ける
「どういうこと?」
「おかしと思わないのか?こんなことになってるのに御者の者さえ声をかけないんだぞ」
セレーネは何となく察したのか顔を引き締めた
「僕のせいかな?」
「半分な」
外に出たヘリオスは手早く馬車の中からセレーネを引き上げる
セレーネは外を見渡して何処か呆れたように呟いた
「大歓迎で嬉しいね……」
「度胸のある奴だ」
ヘリオスが苦笑する
馬車の周りには剣を持った男たちがいた