太陽王と月の少女
ヘリオスは静かに剣を抜いた
すぐ隣でセレーネの緊張が伝わってくる
パニックを起こさないでくれることは有難い
少なからずこういった事を予感していたのかもしれない
「剣か護身術の心得は?」
「護身術なら少し」
ヘリオスは苦笑して次に声を低くして剣を構える
「絶対俺のそばを離れるな……」
夜闇で見にくいが7、8人の男たちが剣を構えてジリジリて迫っている
馬車に馬はついていなかった
おそらく御者の男はグルなのだろう
(馬を切り離して逃げたな……だが追い討ちをかける奴らがクズだな)
馬車についたランプの灯と月光で辺りを見渡せる
しかし、男たちは満足に姿を隠せてもいない
手に持った剣が月光を弾き返していた
居場所はバレバレだ
「こんな奴らで俺を暗殺しようなんて、なめられたものだ」
呟けば、そばで緊張しながらもセレーネは気丈にも苦笑した
「まったくだな、太陽王」
ヘリオスは小さく合図する
それを聞いてセレーネは一気に飛び出した