太陽王と月の少女
セレーネの手を取って引き起こしながらヘリオスは憮然と言う
「こんな時まで『太陽王』か?」
「貴方も先ほど『神官』と言ったではありませんか」
「減らず口め……」
「貴方こそ」
ヘリオスは取り敢えずホッと息をつく
生意気な事を言う余裕があるなら大丈夫だろう
「これからどうします?」
「そのうち俺の配下がくるが、ここに居ては危険だ。歩くぞ」
「『俺の』ですか?」
ヘリオスは少女めいた顔に似合わない不敵な笑いに、苦い思いが込み上げる
「ああ………情けないが、俺が王位につくことを疎ましく思うやつもいる」
先王派は神官と王の証を交換した……渋々ではあったが……ヘリオスの方針を支持しない
強行な手段に出るものもいた
「それは仕方ない事でしょう。例え貴方でなくともこういった事は起こる」
セレーネは慰めるような口調でなく、ごく当たり前の事実を語るように言った
「僕はここに来たから知りませんが、アルテミスでも同じようなことは起きている……」
ヘリオスはセレーネを見据える
価値観は違えど、1人の人間を頂点におく態勢ならばこういった事は珍しくないだろう
2人の立場はよく似ていた