黒蝶‐総長♀×総長♂‐ Ⅱ
キョロキョロあたりをみわたすけど、やっぱりいない。
帰ったのか?
「助けに行ってたんなら、仕方ない。
でも一言言ってくれればよかっただろう。
いきなり出て行かれたら心配する」
「一言言って、絶対に行かせてくれたのかよ」
「それは………」
「一言言う時間が無駄だろ」
ほら、黙った。
てことは、行かせなかった、って思ってるんでしょ?
黙って行って正解。
「あ、あの…」
「あぁ、悪かった。
挨拶がまだだったな」
「僕は、麗桜組若頭補佐兼次期副組長の藤波理人。
よろしくね。
ちなみに、僕の父親は麗桜組副組長だよ」
「俺は、麗桜組若頭兼次期組長の麗桜月夜。
よろしく。
当たり前だけど、親父は組長だ」
挨拶なしで目の前で話されても迷惑だったよね。
軽く頭を下げた。
…ら、
「こちらこそ挨拶が遅くなりました。
私は、紅蓮暁人‐アキト‐と申します」
「俺は、鐘田翔‐カケル‐です」
「私は、藍川満斗‐ミツト‐です。
今日はお招き頂きありがとうございます」
だから、堅苦しい挨拶はいらねえっつーのに…。
忘れてるな、こりゃ。
「月夜さん。
今回はほんっとうに、ありがとうございました。
もう、何度礼を言っても足りないくらい…。
なにかお礼をさせて頂きたい」
「いや、礼とかいらねえ。
てか礼言われる程のことはしていない」
「でも……」
「たまたま通りかかった店を助けた、だけだから」