黒蝶‐総長♀×総長♂‐ Ⅱ
「おまえ、金持ちの坊ちゃんか?」
「………、まぁ、ね。
杉宮グループって知ってる?
そこが俺の実家」
「跡取りなのか?」
「いいや、俺は末っ子だからちげえよ。
だからこんな風に自由でいられる」
杉宮グループ。
その名は聞いたことある。
麗桜グループと比べればかなり小さいが、一般的にみればそこそこ大きなグループだ。
「名字がちげえのは、まぁ、今は聞かないでくれ」
「………わかった。
聞かないでやる」
私も偽名を装ってる身だ。
無理に聞くことは出来ない。
それに今の杉田の顔に今、少し陰ができた気がするから。
「月夜くんは、人に一番大切なものってなんだと思う?」
「人に?
水と食糧なきゃ生きてらんないだろ」
「まー、そりゃね。
でも、他には?」
「他に、か…。
だったら、〝仲間〟」
「……………」
「独りだと人は何にも出来ない。
仲間や友達がいるからこそ正常に生きていける。
俺はそう思う」
本当にそうだと思う。
理人たちがいなかったら、黒蝶のみんながいなかったら。
今の私はいなかった。
いや、理人たちは小さい頃からいたけど、あの人が、ケンちゃんがあの時救いの手をくれなかったら。
私たちは最低な道を歩んでいただろう。