黒蝶‐総長♀×総長♂‐ Ⅱ
やっと顔を上げた杉田をまず椅子に座り直させた。
「黄狼を助けてくれ、…ってどういうことだ?」
「……このままだと、もっと黄狼はダメになっちまう」
「………?」
「俺、さ。
さっきも言った通り、杉宮グループの息子だ。
次男でも、教育やマナーについてはすげえ厳しいんだよな。
杉宮家の恥を晒さねえように…って、ずっといわれ続けてきた」
杉田は目を伏せながら、弱々しくも話し始めた。
〝お前は麗桜家の娘なんだ。間違っても恥を晒すなよ〟
昔の記憶が蘇る。
私の教育係だった人からいわれ続けたその言葉。
今はその教育係だった奴は、問題起こして私が家出てく数ヶ月前に解雇された。
杉田の気持ちはよくわかる。
その言葉は、私にとってはプレッシャーにしかならなかった。
募るに募ったプレッシャーはやがて、今まで保っていたものをいとも簡単に崩してしまうんだ。
私はグレはじめ、母さんたちのことがきっかけで家出したわけだけど。
杉田は………、
「息苦しかった、毎日の生活が。
継ぐものもないのにこの家に囚われ続けなきゃなんねえのかと思うと更に嫌気が差した。
お袋も親父も、仕事中心で子育てとかは全部メイドらに任せっきり。
会うときといえば、パーティーに参加する時しかほとんどなかった。
兄貴も跡継ぎだから忙しいし、俺のことなんかもう眼中にもねえ」
「杉田……」
「寂しかった。
ずっとこの広い家で独りだ。
この生活から、抜け出したかった。
でも出来なかった。
…抜け出したら、親父たちに迷惑かけちまう。
結局俺は、嫌いだ、と思ってても、実際は親父たちのことが好きなんだって、親父たちに好かれたいんだって…」
そんな気持ちがあるだけ、いいじゃない。
両親のことをちゃんと想ってる。