黒蝶‐総長♀×総長♂‐ Ⅱ
「アイツが、優鬼、か?」
「うわ、顔きれー」
「でもさ、本当に喧嘩強ぇのか?
細くねえ?」
私は嫌なことに地獄耳で、自分らはコソコソ話のつもりだろうが、丸聞こえだよ。
「上に、総長たちと黄龍らのトップたちがいます。
皆さん、待っていますよ?
月夜さんのこと」
「うわ、マジ?
俺遅刻したっけ」
「皆さん、暴走の日は早いんですよ」
「ふーん。
…じゃあ、行ってくるわ」
「はい!」
下っ端くんたちに見送られ、何とも居心地の悪かった空間から逃れた私は、いつもの部屋へと足を進めた。
「優鬼が何者かぐらい、俺ら聞く権利はあるよな?」
ドアノブを握ったとき、ふと聞こえてきた知らない男の人の声。
思わず手を止めてしまった。
あぁ、開けそびれちゃったよ。
こういう場合って、開けるタイミングが難しくなっちゃうんだよなぁ。