黒蝶‐総長♀×総長♂‐ Ⅱ
あまりに驚き過ぎたのか、黙り込んでしまった。
「…………。
…、それは、暁たちは知っているのか」
「つい最近バレた」
「…そう、か。
暁たちはそれを受け入れているのか」
「あぁ。
俺らもそっちの人間だ。
それに仲間の実家がどうであろうと関係ねえ」
「……、そうだな。
悪かった、疑って」
「いや……」
疑うのは誰であってもするだろう、この場合。
だから謝ることはないんだが。
「あの麗桜組の若頭が目の前にいるなんて…、信じらんないや〜」
「確かに。
喧嘩強いのもそのせい、ってことか」
「殺気とかも凄かったしね〜!
なんか納得」
「でも麗桜組若頭ってことはさ、権力だってあるし、何より凄ぇ金持ちじゃん!
羨ましー」
…………羨ましい、って?
麗桜組の若頭が?
「……全然、羨ましいことなんかねえよ」
「何で?
だって何不自由なく暮らせるんでしょ?
いいじゃん」
「わからないか?
麗桜組の息子であることがどういうことか」
勘違いする奴は多いんだよね。
財産・権力・実力が有り余るほどある家を、みな羨ましいという。
裕福で何不自由なく暮らせていいな、と。
でも…――――
「麗桜組の…――、全国No.1のヤクザの息子だということは、
………一般人にとっては、恐怖の対象となる」
「っ…!?」
「幽霊や犯罪者らと同じように、…怖がられるんだ。
まあ、ヤクザも犯罪者だけど。
ただその家に生まれてきただけで。
何も犯罪を犯していなくても、……怖がられる」
「…………」