黒蝶‐総長♀×総長♂‐ Ⅱ
そのスーツに袖を通した。
「月夜、はいるよ」
「ああ」
「…久しぶりだ。
月夜の正装姿は」
にっこり笑う理人こそ、久しぶりでしょ。
正装なんて。
若頭補佐であり、次期副組長である理人が着ているスーツは、
〝R〟が〝r〟と小文字になったバージョン。
組長や副組長ともなると、マークがこれより豪華になる。
金色で縁取ってあったりと。
「必要ないと思うけど、念のため銃を所持しろって〜」
「了解」
「それど。
ただ僕のワガママなんだけど、
龍のアクセは外してくれない?
変わりにこれ、蝶のアクセつけて」
「いいけど…、どうして?」
「だって、サッキーたち月夜のこと酷く言うんだもん。
そういう奴の仲間だって証みたいなの外してほしい。
今だけでいいから」
ふふ、ありがとう、理人。
理人はいつも私のこと気にかけてくれるよね。
理人に言われたとおり、龍をモチーフにしたアクセを全て外し、その代わりに蝶をモチーフにしたアクセをつけた。