黒蝶‐総長♀×総長♂‐ Ⅱ
「…残りの半分は、何だ」
「ふっ。
咲希斗の〝トラウマ〟と同じようなことだよ」
……僕の、トラウマ。
藍川組の息子だからって、イジメ紛いのことをされたこと。
そのせいで、人に堂々に〝藍川組の息子です〟って言えなくなったこと。
それと、…同じようなこと?
それじゃあ、つっくんも、怖くて?
僕たちにバレたら怯えられないか、怖がられないか、心配だった、怖かった。
………そういうことなの?
つっくんを見上げると、悲しそうな寂しそうな瞳をしていて…――――――
そっか。
いくら強くて完璧なつっくんでも、人に怖がられるのは…怖いんだ。
そして、あの時僕がいった〝酷いこと〟も。
口では、〝困ることはない、構わない〟と言っていたけど、そんなの嘘だったんじゃないか。
つっくんのただの強がりで、…わざと、突き放した。
本当は相当ショックを受けたんじゃないか。
これは僕の自意識過剰なだけかもしれない。
ただの僕の憶測にしかすぎないけど、…そうなんだ、と確信した。
つっくんの、あんな悲しそうな瞳なんてみたことないから。
つっくんは…、つっくんはいつも僕たちには感情を抑えてしまうから。
最近、ようやく見せてくれるようになった、様々な表情。