黒蝶‐総長♀×総長♂‐ Ⅱ
返事して早々、断りたくなったけど。
一度は受けた頼みを、すぐに断るのは気がひける。
重たい足を引きずりながら、暁たちが泊まる部屋へと向かった。
近くまでくると、理人と暁たちの声が微かだけど聞こえ、まだそこに理人がいることが確認できた。
なんだったら、そこに理人がいなければよかったとに……。
そしたら、顔あわすことはなくなるんだし。
溜め息を1つつき、床を見ていた視線をあげた。
泊まるはずの部屋の襖が少しばかり開いていて、そこから薄暗い廊下に明かりが漏れる。
「ねえ、だからつっくんに会わせて!」
また、さっきと同じように咲希斗の怒鳴り声。
ピタッと動きが止まる私の体。
「会わせてって、なんで?
月夜のこと信じられないんでしょ?
なら、会う必要ないんじゃない?」
いつものように軽い口調で答える理人だけど、どこかその言葉にはトゲがあって……。
「だからっ、僕は謝りたいの!
つっくんに、ごめんね、って」
「………今更、なんだよ。
咲希斗は、言葉の威力がどれだけの力があるか、わかるか」
声がいつもよりも1オクターブくらい低くなって、〝サッキー〟から〝咲希斗〟になり、
明らかに、理人はキレていた。