私がどんなに好きか君は知らない。
その日の夜
「実穂ーっ!お隣さんに
回覧板持ってってちょうだい!」
「えーー…」
「お小遣い増やしたるから!」
「はい!ありがたく行かせて頂きます!」
お隣さんとは
つまり、和広の家のことだ
和広の家は毎日のように
訪問するから慣れてるはずなのに
なんだか今日は緊張する…
今日の告白の噂
和広も聞いてたらどうしよう…
そうこう思ってる間に
家の前まで来てしまった
恐る恐るインターホンを
押してみる
ピンポーンピンポーン
やばい…なんか滅茶苦茶
緊張してきた…
ガチャッ
「あれ?
実穂じゃん、どうした?」
「えーっと…これ、回覧板」
「あーサンキュ!」
いつも通りの会話で少し
ホッとした
「それじゃあ、また明日ね」
そう言って別れをしようと
したその時
「なぁ、実穂…
転校生に告白されたって
本当か?」
う…やっぱり和広にも
情報が回ってたのか…
「う…うん…」
「そいつと付き合うのか?」
「ううん、私断るつもり」
しばらく沈黙が続いた
先に沈黙を破ったのは
和広だった
「そっか……良かった」
「えっ!?」
「なんでもねーよ
じゃあまた明日な」
「う…うん」
そう言うと和広は
家の中へ戻って行った
バタン
私は和広の家のドアを閉め
その前に座りこんでしまった
和広…
「良かった」って
言ったよね…
それってどういう意味…?
そんな言葉聞いちゃったら
私…
うぬぼれちゃうよ…?
もしかして両思いなんじゃ
ないかって
期待しちゃうよ…?
和広はずるい…
「良かった」なんて一言で
私をこんなにも惑わす…
でもこれは小さなすれ違いの
始まりでしかなかったのだけれど…