恋模様



「ちょっと、円香!?」



円香は振り返らない



どうしたんだ?



こんな円香始めてだ…



掴まれた左手が痛い



円香って、こんなに力強かったっけ?



あっ、あたしが弱くなったんだ…



「爽、あんたは知らなくちゃならない」



円香がやっと口を開いた



「何をだよ!?」



「全てを…」



全て?



そう言って連れて来られたのは、見覚えのあるホテル



「ここっ…、ヤスん家の」



けれど、円香の足は止まらない


たくさんの人込みの中、あたしは円香に引っ張られながら一枚の絵の前まで来た



「ここよ」



ドンッ



円香が急に立ち止まったから、円香の背中におもいっきり顔をぶつけて尻餅をついた



「いってぇ…」



「あっ、ごめん爽」



円香が慌てて手を差し出した



あたしはその手を取って立ち上がった



ふっ、と一息はいた







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