勇者な二匹
幸いにも、ウーラは電話に夢中でこちらには気付いていない。逃げるなら今のうちだ。ってゆーか、…怖い!!怖すぎる!!電話に向かって大声で怒鳴り散らしているところを見ると、彼は相当機嫌が悪いようだ。
僕に対して怒鳴っているわけでもないのに、足が鋤くんで動かない。とんだ臆病者だ。
だが不意に、ウーラがこちらを見た。
「……っ」
緊張で固まる僕。
「……」
電話を耳に当てながらも無言で僕を見つめる彼。
…電話の向こう側の人の声が酷くキレているように聞こえるのは僕だけだろうか?
端からみたら、奇妙すぎるこの光景を、どれくらいやっていただろうか。
その光景を打ち消すように動いたのは彼。
ではなく。
この部屋、つまり理事長室の扉を開けた人だ。
この光景を壊してくれた人は、僕にしたら謂わば救世主で。その正体を確かめるべく、僕は開けられた扉を目で追った。
だが現実がそうも上手くいく筈もなく。ね。
「ウぅーラぁーっ!!てめぇ、俺の電話を途中で切りやがったなっ!?」
類は友を呼ぶ。こんな言葉を造ったやつを本気で恨むぜ。だってさ!!飛び込んできたのも不良だよ!?ウーラの恐怖から助けて欲しかったのにまた不良が来ても意味無いでしょ!?ただの怖さ倍増でしょ!?