未定
わたしの家では、わたしが小学生の頃から熱帯魚を飼っていた。
父親の趣味だった。
趣味といっても、何事にも深くのめり込むことのない父親だったから飼っていたのはグッピーだけだった。
魚たちは小さいくせに広い水槽を与えられて泳ぎ回っている。
その頃、内気で学校でもいじめられっこだったわたしは、子供ながらにその世界を羨んで妬んだ。
両親がいないとき、ひとりで水槽を眺めていると無性に腹が立ってくる。水槽に顔を近づけると餌かと寄ってくる魚たち。わたしはそれらを散々引き寄せておいて、バンっとガラスを叩く。驚いて散る青っぽい光を見ると、自分はこいつらを騙したんだ、と思って少しの優越感に浸った。