そして、今日もキミを想う。【完】
「ありがとうございます」
俺はあんなにもぶっきらぼうに答えたというのに、彼女は柔らかい微笑みを俺に返した。
それは、俺が一人の客であるからかもしれない。
それでも、彼女の笑顔は痛いほど優しすぎた。
そんな姿を見ていると苦しくなって、早くこの場から逃げようと思った。
「じゃあ、ごゆっくりしていってください」
そう言って、彼女は啓太の部屋のドアの方へ行こうとする。
彼女の行動なんて、見なくても分かっていた。
でも、衝動から言葉が口から飛び出した。
「待って!」
どうしても、啓太のところに行ってほしくない。
その一心で、俺は凛を呼び止めた。