そして、今日もキミを想う。【完】
凛は不思議そうな顔をしながら、振り返った。
「あ、あの、えっと……」
本当は話す事なんて無かったから、つい口籠もる。
焦って何か言おうとした。
そんな時、口を衝いたのは言いたくもない言葉だった。
「婚約……、というか結婚……おめでとう」
彼女は驚いて目を見開き、俺のことをじっと見た。
それもそうだ。向こうにしてみれば、俺は知らない相手なのだから。
そんな様子を見て、俺は言い訳するように言葉を続けた。
「啓太から聞いたんだ。婚約したって……」
何を言ってるんだ。
この話は自分が一番したくなかったのに。
「幸せになれよ、凛」
幸せになれ、だなんて言いたくなかった。
本当は俺が……、お前を幸せにしてやりたかった。