そして、今日もキミを想う。【完】

思いがけない出来事に、俺の足は必然的に止まった。
そして、ゆっくりと振り返る。

「寿々歌……」
「思い出した。今、思い出したの。高校時代のことも、大悟のことも、私が大悟のことをどれほど好きだったかも……」
「嘘だろ……?」

そう呟いたのは俺ではなく、部屋から出てきた啓太だった。
啓太は呆然とした表情で、凛――寿々歌を見つめた。

「なぁ……、何言ってるんだよ凛……」

今にも泣き出しそうな顔で、すがるように寿々歌に近付く啓太。
寿々歌の口から発された真実は、俺にとっては夢のような、啓太にとっては悪夢のような、信じられない内容だった。
俺も啓太も、ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。

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