そして、今日もキミを想う。【完】
「それで、事故に遭った。記憶が無い私は、――凛となった私は間違いなく啓太のことを愛してた。ずっとそばで私を支え続けてくれたのは、啓太だったから」
啓太はぐしゃぐしゃの顔で、寿々歌を見た。
寿々歌の言葉に、希望を見たのだろう。
「記憶を取り戻さなければ、私は何の躊躇無く啓太と結婚したと思う。でも、今私は記憶を取り戻したの。今の私は凛じゃない。寿々歌なの」
ずっと俯き加減に話を続けていた彼女は、はっきりとそう断言して顔を上げた。
「寿々歌である私は、今のまま啓太と結婚するわけにはいかないの」
そう言って寿々歌は啓太の方を見た。
俺の方からは、寿々歌の後ろ姿しか見えなかったから、啓太と寿々歌がどんな表情で向き合っていたのかは分からなかった。