僕らのアナザーリアリティ
そこは昔見ていたあの夢と同じような世界だった。敢えてちがいを述べるなら、今は1人じゃないこと。そして夢では漆黒に染まっていたけれどこの世界は純白の白だったことだ。
「あの夢に似てる。」
「あの夢?リトはこの世界に見覚えがあんの?」
「うん。昔よく見ていた夢にこんな世界があって、まぁそのときは白じゃなくて黒い世界だったんだけどね。」
「ふ~ん。」
「なぁリト、柚木!ここすごくねぇ!?上も下も右も左も分かんねぇし、何より足場がなくて浮いてんのに落っこちたりしねぇんだぜ!!」
「あぁもう。何であいつはあんなに脳天気なんだよ。」
「...ちがうよ。」
「...梨斗?」
「僕らが何だか暗いから、だからわざとあんなふうに振る舞ってくれてるの柚木だって分かってるんでしょ?」
「梨斗には敵わないなぁ。...知ってるよ。昔から歩はそういう奴だった。あいつのああいうとこに、よく救われたっけな。」
「本当にね。」
「お~い2人して何やってんだよ。早くこっちこいって!ソラン速いから見失っちまう!!」
「今行く~!...ほら柚木も行くよ!!」
「ちょっと!待ってよリト~(ああいうのは鋭いのに何で好意にはあんなニブチンなんだよ。リトの馬鹿。)」
梨斗たちはようやく先を行くソランに追いついた。
「ねぇソラン。さっきから何で黙ってるの?僕たちの方も向いてくれないし...」
『今から俺を見ても驚かないで下さいね?』
「えっ?うん。」
このとき梨斗たちは違和感を持った。ソランの1人称が“俺”に変わっていたこと、そして何よりその声が“ハスキーで格好いい青年の声”になっていたからだ。
『もう気づいてるみたいですね。』
そしてこちらに振り向いたソランは、藍がかった黒髪に白い肌、薄い唇、少し垂れた綺麗な蒼い瞳をした、綺麗な“青年”になっていた。
「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」」」
梨斗たちの叫びは純白に吸い込まれていくのであった。