好きって言ってよ。





そんなあたしを見て、彼はかっこいい顔を歪めた。


『何で、あなたの方が辛そうな顔してるの?』って聞こうかと思ったけど、やめておく。


けど、すぐに優しい顔に戻って。


「君が話したかったら、ね?」


そういえば、大地くんがいつも
『アイツは優しすぎる』なんて言ってたっけ?


本当だね。
“君”って呼ばれるのってなんだかくすぐったい。


だから少しだけ、気持ちが柔らかくなった気がして。


……今なら、話してもいいかも知れない。


そう思って、あたしは彼に話す決心を決めた。




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