終わりの時、そして始まりの時
しばらく抱きしめた後

涙を流す彼女の背中を数度「トントン」と叩き俺は彼女を車に乗せた。

泣いて話す事が出来ない彼女、心配で心配でたまらない俺、車の中には彼女の泣く啜り声だけが聞こえていた。

しばらく車を走らせてほんの少し落ち着いた彼女を見て

「大丈夫?」と声をかけた。

その言葉にゆっくりとうなづく彼女

少し間を置いて「ゴメンネ」と彼女が言った。

「大丈夫だよ、なんかあった?」

そこで、初めて彼女が泣いている理由を聞いた。

俺にはどうしてあげることも出来なかった。

ただ、話を聞いてあげるだけしか出来なかった。

しばらく車を走らせると、彼女がほんの少し笑った。

俺は、その笑顔を見たときに少しほっとした。
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