3週間の激恋

恵子ちゃんが帰ると、あたしは理佐に手を引っ張られ印刷室に引き込まれた。


「先生、何しよんのー？」


印刷室に入ると、社会の玉崎先生と戸川先生がいた。


印刷してるのは社会のﾌﾟﾘﾝﾄ。


「何それー。」

「宿題。」


玉崎先生、通称「玉」・「玉ちゃん」。


「これを今から･･･｡」


ﾋﾟｰｯﾋﾟｰｯﾋﾟｰｯ


「あら。これを･･･｡」


ﾋﾟｰｯﾋﾟｰｯﾋﾟｰｯ


「あらら？これを･･･｡」


ﾋﾟｰｯﾋﾟｰｯﾋﾟｰｯ


「先生、壊しよんのやねん？」

「ﾊﾊﾊｯ」

「動かんなぁ。これを今からﾎｯﾁｷｽで止めるんやけど･･･｡」

「やるー！ｳﾁ、やる！」

「え？ﾎﾝﾄ？」

「ﾎﾝﾄ、ﾎﾝﾄ！」

「じゃぁ、やってもらおうかな。」


戸川先生は何も喋らず玉ちゃんの横にずっと立っていた。


「緒川ー。」

「はい？」

「これ、出しきる？」

「えー･･･出しきらん。桃ー！」

「うん？」

「これ、出しきる？」

「多分。理佐ー。」

「ん？何？これ、手伝って。ｵｯｹｰ！」


「緒川」っていうのはあたしの苗字。


「先生出したよー。」

「はいよー。じゃぁ、順番にﾎｯﾁｷｽで止めていって。」

「分かったー。」


ﾎｯﾁｷｽ止め開始。


戸川先生はﾏﾈｷﾝみたいにその場から全然動こうとしない。


暇なのは分かるんだけど、ここで何もしない方がもっと暇になると思うんだけどなー。


玉ちゃんが印刷室を出て行った後、理佐が先生にこんな質問をした。


「先生の好きなﾀｲﾌﾟっち何？」

「好きなﾀｲﾌﾟ？」

「ﾔﾝｷｰかやんちゃか静かな子。」

「先生、AB型やけん静かな子が好きやろ？」

「なんなん、それ。」

「だって、ｳﾁの兄ちゃんとお母さん静かな子が好きやけん。」

「先生どれ？ﾔﾝｷｰかやんちゃか静かな子！」

「「ﾔﾝｷｰっち。」」


桃の質問の反応にあたしと先生の言葉がﾊﾓった。


「静かなのも嫌やけど、ﾔﾝｷｰも嫌やけんやんちゃぐらいが良いかな。」